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フリースタイルMC『八木山』は「天才」ではない

八木山

仙台より現れたフリースタイルMC「八木山」、彼は自らのことを「天才」であると称した。


以下が彼の自己紹介替わりに披露したフリースタイルrapだ。

「俺が怖がり? 相当ほら吹き。
見せてやるぜ根性 今ここで参上  
魑魅魍魎と意気投合
むしろこの場で逃亡 
したい気分だけど 現実は非情 
俺は遠足のように平常心保つ
揺れるバスの中ゲロ袋持つ
 レペゼンSENDAI 俺は天才」




天才とは何か?と問われた時、おおよそ得られる回答は「凡人が思いもつかないような発想をする」「革新的である」というものだろう。

しかし、このライミングには決して「凡人が思いもつかないような発想」の押韻は含まれていない。
それと同時に「革新的」と思えるほどの強力なパンチラインも見ることはできない。




つまり、到底彼を「天才」と称することはできない。




このように感じたのは筆者のみではないはずだ。
ただし、この1verseはそれだけで済ませるにはあまりにも浅はかである。


結論から言うと、彼は底のブ厚い下地とある種の信念を持った、オールドスクールな硬派rapperである。

どっしりとした重く硬いrhyme。虚勢の中に垣間見えるstory、彼のStrongpointはそこにある。


象徴的なのは小節をまたぎながら韻を踏む3~5小節目だ。

『魑魅魍魎と意気投合
むしろこの場で逃亡 
したい気分だけど 現実は非情』


「魑魅魍魎」と「意気投合」、母音(いいおうおう)と6文字で韻を踏む高度にテクニカルな瞬間をそれだけで終わらせず、続けざま
「逃亡」と母音(おうおう)とまくし立てるような4小節目、1拍間を持たせて「非常」母音(いおう)とストーリー性を持たせつつ区切りをつけ、全体を強く締めるものとしている。


また、

『俺は遠足のように平常心保つ
揺れるバスの中ゲロ袋持つ
レペゼンSENDAI 俺は天才』


と続け、硬く韻を締めながらも状況をよく理解させる持たせながらも、最終小節において仙台出身であることを示すことで、自身の名前である「八木山」は地名から取られているものであり、地元では有名であろう遊園地「八木山ベニーランド」への遠足への行路を想起させ、オーディエンスを驚愕させる。

これらはかつてラッパ我リヤが持っていた、韻を可能な限り踏み、下手をすればコミカルにもなりかねない日本語rapにおいても英語rapと対等に闘えるという発想を体現したものである。
彼は本場とも対等なステージに立つことを志向したごく硬派なrapperであり、現代ではまれにみる信念の持ち主であると言える。
そして、この韻の硬さからは一筋縄ではいかない下地を組み上げるための努力が感じられる。

この1verseは彼の積み重ねによって打ち立てられた至高の作品であり、まさに「あいさつ代わり」。
彼の闘争が「本場」に届くまで、決して目を離すことはできない。
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